花形歌舞伎

歌舞伎役者では菊之助がもちろん好きなんですけど、宝塚的に成長を見守りたいのが尾上松也君。その彼が6演目中4演目に出演するという大活躍をしてました。そして、あんまり変わることのなかった筋書きやちらしの彼の写真が変わってました。成長期であまりに変わってしまったからでしょうか?
彼を初めて認識した頃は、ずら〜っと並んだ腰元の一人だったと記憶してます。ちょっとふっくらしたお顔に化粧が似合って、目を惹いたのです。そして尾上松助の息子と知り、まさかこのまま成長して通人(助六)になってしまうのか?とちょっと心配も。それが、美貌はそのまま、身体は引き締まってスリムになって立ち役も気品があり。松助の若い頃を知らないので、もしかしたらパパも元々は美少年だったのかも知れませんけど。
松助も昨年亡くなってしまって、あの通人が見られないのはやはり残念…。二十歳で父親を亡くして、それも、梨園の名門ではないし、彼がこれからどうなるのか?松助の弟子がそのまま残ってはいるらしいのだけれど…。

「番町皿屋敷
松緑が青山播磨だったのですが、彼にはこういった恋愛もの、色の白い役は似合わない。それに、お菊さんが芝雀で、年齢的に…。ここに松也が来る時代は近いか!?

勧進帳
海老蔵の弁慶。私は初見でした。かなり力みがあって、観ているほうが疲れました。平成10年1月の浅草公会堂では金太郎のような松緑(当時は辰之助)の弁慶を観たのですが、どちらか?と聞かれれば、当時ではあっても松緑のほうが良い。富樫には初役の菊之助。何だか海老蔵に乗せられているのか、こちらもかなり力の入ってしまった(悪い意味で)富樫でした。ちなみに義経芝雀でした。この公演、芝雀も大活躍です。

「弁天娘女男白浪」
菊之助はもう何度も演じてますが、女から男への大変身!がさらに変化が大きくなってます。そして、何より、松也が赤星十三郎を演じてます。前髪鬘(正式な名前を知らないのですが…)姿、立ち姿が美しく、線も細く、本当に美しい!この公演、5列目どぶでの観劇だったのですが、ちょうど、5人が花道に並んで下手を向いているときに、何やら松緑がぶつぶつ…。まったく落ち着きのない子だわ、と思っていたら、本舞台で下駄を交換してました。鼻緒が外れていたのかもしれません。それにしてもちゃんとマイクで裏方と連絡が取れるのですね。

「時今也桔梗旗揚」
初めて観ました。眠くなりました。そこはこらえて松緑に集中!明智光秀織田信長の話で、信長の、あまりにも冷たい扱いに、光秀が耐えかねて暗殺に行く!ところで終わります。 が、この冷たい扱いがまるで今のいじめのように悪質です。その耐えているところから、爆発するまでの変化が松緑は上手いです。そう、彼はこんな役が似合うんです。しっぽりとかは無縁です。

船弁慶
静御前菊之助は綺麗です。きっと舞踊も上手いのでしょう。でも、私には能の娘役(表現が変ですけど…)の頭がウルトラマンの怪獣、ダダに見えて仕方がないんです。冨十郎が3年前に演じたときも思ったのですけど。そして、ずっと気になってるんです。もしかしたら怪獣のデザインの元は能なのかも?…と。

義経千本桜」
夜の部の一番の目玉、と思って観劇しました。何しろ猿之助が直々に稽古をつけたのですから。猿之助勘九郎菊五郎でも観ているけど、今回は何かが違う!?若い!若過ぎるんだ!子の親になって改めて父母への思慕が高まったのだ…と解説にあるのですが、どう見ても、昨日今日、親とはぐれた子狐のような印象を受けるんです。それは、それで良いのかも知れませんけど。それに、彼がアクロバティックな動きを見せてもさら〜っとこなしているように見えて損をしてます。おじさま方は汗にまみれて頑張ってます!って感じで動いているのに。それに台詞もはっきりしなくて、声量もない。もうちょっとおじさんになってから観てみたいです。